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もしドラ×立正大学経営学部
感銘を受けた『マネジメント』を芸術作品として捉え、
実用性を伝えるべく『もしドラを』を執筆
佐藤『もしドラ』は、ドラッカーの『マネジメント』を中心にした、ストーリーになっているわけですが、まず素直に物語に入り込むことができて、感激しました。
みなみちゃんのお友達が亡くなるシーンとか、ホロッときた場面もありました。
経営学を教えている立場から言わせて頂きますと、非常にありがたいと感じた作品でもあります。
マネジメントに対する認識や必要性が広まるきっかけになりましたから。
岩崎さんが『マネジメント』に出合われたのはいつですか。
また、どうして『マネジメント』を題材にした作品をお書きになろうと思ったのでしょう。
岩崎私自身には20歳ぐらいの頃から論理立てて、あるいは分析して物事を考えるのが好きだという意識がありました。
けれど、世の中はなかなか難しいもので、社会に出てみて、どういう原理でこうなっているのか論理立てて見渡してみても、理解できないことが多々あった。
特に人間というのは難しくて、私もいろいろな組織の中で生きてきましたが、わからないことも多かった。
そこで、人間関係を解き明かすうまい方法はないかと考えていたときに、たまたまドラッカーの『マネジメント』に出会ったんですね。
ビックリしました。私が求めていた解がすべて書かれているというか、驚くほど、私の求めていたものにピッタリだったんです。
問題を分析して、その要点を抜き出し、さらに答えを明文化して教えてくれている。
これは錯覚なんですが、当時は「ドラッカーは私のために書いてくれた」、そう思うぐらい感動しました。
『マネジメント』で『もしドラ』を書こうと思った直接のきっかけはその頃に流行っていた『ダ・ヴィンチ・コード』です。
古の芸術作品をモチーフに物を作るというのは、物の作り方としては非常に有効だと常日頃から思っていたんですが、『マネジメント』は私自身の中では、300年と受け継がれていく文学作品にほかならないという思いがありまして、だから『マネジメント』で小説を書こうと思ったわけです。
閉塞状況を打開したいと願う、
現代日本人の気持ちにフィットした『マネジメント』の説得力
佐藤私も学生に読むように薦めています(笑)。
現実的な問題意識が喚起される『マネジメント』ですが、取っ付きにくいイメージがあるのもまた事実です。
そんな作品を土台にしているにも関わらず、『もしドラ』がヒットした理由はどこにあるのでしょう。
岩崎いくつか要因があるんでしょうけど、ひとつには、やっぱり今の世の中が『マネジメント』を求めていたんだと思います。
ドラッカーは1974年に『マネジメント』を著すんですが、この中で、知識社会化が進んでマネジメント層、つまり支配する層が必然的に、上の人から下の人に広がっていく時代の変化を予言していて、その未来で、この本が新しくマネージャー層になった人々に、きっと役立つと書いています。
翻って現在の日本で考えてみると、知識化社会がある程度、完成していたにも関わらず、新しいマネージャー層になっているはずの一般の人々が、自分たちがマネージャーであることに気付かず、政治家や大企業の経営者に、自分たちがすべき事を丸投げしてきた現状があった。
しかし、それが一変するのがリーマンショックのとき。派遣切りする経営者を見て、政権交代が起きても国が何も変わらない現実を見て、そのとき初めて新しいマネージャー層たちは気付いたんです。「自らが世の中を良くしていく主人公にならなきゃいけない」と。
けれど、そう思ったものの、やり方がわからない。参考書を求めて本屋に行くと、たまたまそこに私の本が置いてあった。
手に取って読んでみたら「参考になる」と思って頂けた。仲間やパートナーに薦め、薦められた方もまた知人に薦めて、どんどん広まっていった。
これがヒットの最大の理由だと思っています。
日本の社会においてマネジメントが本当に求められている時代こそが今で、そこにうまくはまったということでしょう。
社会が抱える問題に対する答えを、
わかりやすく明確に人々に伝える効果が小説にはある
佐藤ヒットした理由には時代が求めたというだけでなく何と言ってもストーリーそのものの魅力があると私は思っています。
今、求められているのはマネジメントの理論をどれだけわかりやすくドラマ性を持たせて伝えられるか。
ヒットの理由にはそういう部分もきっとあるはずです。
岩崎歴史的に考えても、寓話が常に人々の教育に大きな力を発揮してきたというのがありますからね。
これは人類の本質といってもいいかもしれません。例えば、神話は単に面白いだけでなく、その中に、道徳、哲学など、様々なものが込められていて、子供たちに読み聞かせることによって、大きな教育となった。
小説も、物語の中に社会の中にある問題への答えや、問題意識そのものを込めて提示するというのがオーソドックスなひとつのあり方。
その方が人々に理解されやすいですし、伝わりやすいんですね。
『もしドラ』は中学・高校の部活動でキャプテンをやってる子たちに読んで欲しい。 きっと役に立つから
佐藤『もしドラ』はどういう方に読まれていると感じていますか。
または、どういう方に読んで欲しいと岩崎さんご自身はお考えでしょう。
岩崎読者は本当に老若男女なんですよね。ただ、しいて言えば女性が多いということになるでしょうか。
世代も、30代や40代が少し多いという程度で、様々な世代に読まれています。
これは出版社が私によく言うんですが、9歳から90歳まで読者カードを頂いているとのこと。
最近では小学校で流行ってるらしいですよ。小学校の授業で『もしドラ』を読んで、それについて語り合う。
そんな流れがあると聞いています。
で、私自身が誰に読んで欲しいかとなると、やっぱり中学、高校の部活動でキャプテンをやっている子たちに読んで欲しい。
彼らに役立つ本だという確信が私の中にはありますので。
佐藤企業の経営者になると、実際に『マネジメント』を読まれている方は多いと思うんですが、マネジメント層すべての人が『マネジメント』を読んでいるわけではないですよね。
ただ、マネジメントが重要であることは誰もが認識している。
だからこそ、入門書として果たす『もしドラ』の役割は小さくないと思っているのですが。
岩崎もちろん、そうなって頂ければ嬉しいですが、これまでドラッカーを読んでみたけど効果がなかったと感じている人も少なくないと思うんですね。
で、どうしてそういうことになるのかというと、それは結局、自分に都合の良いところだけ、納得できるところだけ、つまみ読みをしているから。
その行為は、自分ができることはやるけれど、難しいことはやらないという考えに繋がる。
それではまったく成長がないし、読んだ後でも、それまでの自分と何ら変わらないんですね。
虚心坦懐という言葉を私はよく使うんですけど、「虚心坦懐、そこに書かれている教えを乞う」。
読んで頂けるなら、ここにあることはすべて丸飲みにするぐらいの覚悟でお読み頂きたいという気持ちが私の中にはあります。
経営学とは、人間を知るための基本中の基本。
人間を知れば、どのような難問も必ず解答が見出せる
佐藤小説であれば、ただ一場面を見ていてもしょうがなくてストーリー全体を追わないと意味がないですし、数学なら、数式を最後まで全部解かなければ答えは出ない。
マネジメントで言えば、いくつもの理論が重なって結果に繋がり、成功するわけなんですよね。
つまみ食いではなく、体系としてきちんとマネジメント理論を理解していかないと意味がない。
学生にも、そのことはしっかり伝えなければいけませんね。
『もしドラ』の話から少し離れて経営学の話をしたいのですが、マネジメントを学ぶ魅力や面白さ、実生活にこれだけ役立つという有益性に関して、お聞かせ下さい。
岩崎私は非常に幅広い範囲で活動をしているんですが、それがなぜ可能かというと、突き詰めているテーマが人間だからなんですね。
人間はどう考えて、どう行動し、どう反応するのかを突き詰めて考え、知識と経験を積み重ねてきた。
例えば、漫画を作る場合、その技術や歴史はよくわからないけど、人間はこういう物を求めているんだから、こういう漫画にしたらいいと考えることができる。
すぐに答えが出せるんですね。だから、人間を知るというのは基本中の基本で、これを知れば、あらゆる場面で応用が利くんですね。
経営学とは、正にこの「人間とは何か」ということを学ぶ、ひとつの重要な柱。
人間は社会的な生き物というのが大前提としてありますが、その社会と個々の人間がどう関わり合っていくのかを学ぶのが経営学で、人間を学べば、この先、どんな仕事をして、どんな困難に突き当たっても「人間」を基準に問題を解いていけば、そこに必ず答えがあるんです。
佐藤『マネジメント』も基本的な生き方の指針となるわけですね。
岩崎その通りです。『マネジメント』は単にマネジメントする人だけが読めばいいというものじゃないんです。
さらに言えば世の中に完全なマネージャーっていないんですよ。
つまり、どんな企業の上層部の人でも神様のようなお客様がその先にいて、最終的にはお客様の声に従わざるを得ない。
完全に自分の意志だけですべてをコントロールできる人は1人もいないんですね。
会社組織の一番下っ端の人でも、実は、会社そのものが自分の顧客である場合もあるし、あるいはご自身のご家族との関係もある。
人生の様々な場面で『マネジメント』は役に立つんです。






